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80年代文化の復権とかfuturefunkとか

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 ここ数年ぐらいからしばしば80年代文化の再興、みたいな内容の記事がしばしばホットエントリーに挙がってきたりしてるのでその関連で80年代文化再興の一角たるfuturefunk/vaporwaveの話とかをちょろっと書いてみる。そして来年あたりにでももっと本格的取り上げられるようになった日なんかに「わしが育てた」みたいなこと言いたい(言いたくない)

Vaporwave(ヴェイパーウェイヴ)というのは、雑にまとめてしまうなら、80年代前後の音楽およびそれに付随するアニメやテレビドラマ、CMなどの大衆文化を素材とし、現在(2010年代)の視点と現在の電子音楽技術でもって再解釈し、新たに作られた、再構成された音楽のこと。
 アニメなどの動画の音声を素材にすることがあるという点で、ときどきナードコアというジャンルとの類似性を指摘されていることがあるのだけれど、こちらはハードコアテクノの流れにあり、アニメやネットミームだけを素材とするのに対して、vaporwaveは80年代の大衆文化を全般的に取り扱っていてアニメの音声を用いることが絶対条件というわけではないこと、またその音楽の根本が基本的にディスコ・ファンクやAOR(いわゆる日本で言うシティ・ポップス)、フュージョン、スムース・ジャズといった80年代の大衆文化を反映した音楽の再解釈にあることなどから言って、実際のところそれほど似通ったものではない。
 それから音楽に限らず同時代の大衆文化の再解釈という視点も音楽自体に内包されているため、単に音楽ジャンルとしてだけでなくファッションカルチャーとしての側面もある。サンプリングの元となる音楽は基本的に同時代の大衆文化を反映したものでなくてはならず、ただ80年代の音楽ならなんでもいいというわけじゃない。例えばジョン・フォガティの『センターフィールド』は85年に大ヒットを記録したアルバムだけれど、その内容は60年代後半のCCR時代と変わらないブルージーな南部ロックを志向したもので、80年代文化とは独立していてvaporwaveの素材たりえるものじゃない。一番最初に挙げた記事のSatellite Youngというアーティストもエレクトロニカと80年代歌謡、そして同時代のファッションカルチャーを自身の要素として取り込んでいるし、2012年から今年初めまで活動していて、vaporwaveを全面的に意識したEspecia(エスペシア)というアイドルグループがいたのだけど、ここからも80年代の要素が単に音楽それだけではないことがわかると思う。


 自分がこの辺のジャンルの音楽を発見したのは一昨年の夏とかで、知り合いから勧められたクラブミュージック系のコンピレーションなんかをYouTubeで聴いてたときに紛れ込んでて聴いたのが最初。たしか自分が拾ったのは、ギリシア系の石膏像にピンク色のビカビカした胡散臭いCGイラストの背景とiMac以前の時代のMacコンピュータみたいなジャケットのやつで、そこからいくつかリストに保存しておいてちょこちょこ聴きはじめたという感じだった。
 自分が最初に検索エンジンで調べたときにはWikipediaに記事はなんかはなかったんだけど、それから程なくして新しく日本語記事ができた模様。ただ検索してみると2012年に作成されたらしいtogetter記事があり、ここで“vaporwave”という単語を含むツイートが大量にまとめられている。つまり少なくともこの時点で一つのジャンルないし集団を形成するものとみなされる程度の規模はあったらしい。


 技術とか理論的な話はよくわからないので、説明はこの辺にしてメモがてら個人的に気に入ったやつなどを挙げていく。

 80年代シティ・ポップス系。これは杏里のshyness boyがサンプリング元で、調べたらキャッツアイのオープニングが入ってるアルバムだった。動画のアニメ(なお無断使用)はたぶん『きまぐれオレンジ☆ロード』 そういえば何年か前に知り合いにきまぐれオレンジ☆ロードのエンディングテーマだった和田加奈子の『夏のミラージュ』を勧めてもらって、一時期それをずっと聴いてたなあ。下のリンクだけ貼ったものは香坂みゆきの『ニュアンスしましょ』が素材。
 vaporwaveだと日本のシティ・ポップスを取り上げられることが結構あって、自分が聴いたなかでは他にも角松敏生山下達郎松任谷由実なんかがあった。あと元ネタは判らなかったんだけど、他に聴いたやつでは、サビとイントロのストリングスがまんまスタイル・カウンシルの“Shout To The Top”のストリングスだったやつがあって、それも80年代のポップスのようだった。

クラブミュージック系。アニメの音声素材を使ったものでは上のやつがとくに気に入ってて、それなりの回数を聴いている。こちらは動画中で80年代のアニメのダンスシーンを切り取って使ってるんだけど、これはなんて作品なんだろうか。『メガゾーン23 Part1』とかでそんなシーンあったような気もするけど。

 スムースジャズフュージョン系。個人的には一番上に載せたような日本のシティ・ポップものよりもこの辺のほうが好きでよく聴いてる。上のやつが肌に合わないとかいうよりは、単純に「サンプリング元をそのまま聴けばよくない?」って思ってしまう。もともとその向きの音楽ってこれ以上付け足さずとも十分に完成されてるものが多いし、ましてや山下達郎角松敏生なんかはボーカルありで敷居もそれほど高くないわけだしね。アコースティックよりも電子音楽の方が身近に感じる、ってのも今の世代じゃ少なくないし、エレクトロ・スウィングなんかもあるのを見るに、そういう向きがあるのも別にごく自然な流れなんだろうとは思うけど。ただ、アーティスト名、曲名含め日本語の切り取り方とか、そういう部分は単純に面白いなと思う。先に上げた“の主人公 Heartbeat Soap Opera 恋に落ちます”とか、本人はこれで合ってると思ってるのか、それとも分かっててあえておかしな語の組み立て方をしてるのか、どっちなんだろうね。

 最後におまけ。これもvaparwave系のコンピレーション動画に載ってたんだけど、これの場合は80年代はそれほど関係なくて、ジャズ・スタンダード“These Foolish Things”のテナー・サックスでの演奏で、多分ビ・バップーモダン・ジャズ期のもの。80年代の録音であるにせよ、多分50年代からのプレイヤーだと思う。Wikipediaの項目なんかを鑑みるに、これは厳密にはvaporwaveじゃないと思うんだけどどうなんだろうか。まあ、こまけえこたぁいいんだよ(死語)


 それから最後に少し。先の記事のはてブページなんかを見ると分かるんだけど、はてなのお歴々の方々やその同世代の方々なんかは結構この80年代文化復権の流れを「おっさん世代のオナニー」とか「バブルに憧れてるようじゃダメ」とか、しばしば自分たちの経験した80年代の社会の空気感と若い世代が憧れを感じている80年代文化の違うことに気づけていないんだよね。
 別に80年代が若い人の間で持て囃されるようになったのも別にバブル(好景気)だったからではなくて、単に「自分達の知らない未知の時代」だから。そもそも、今回のそれに限らず、ほとんどの過去の文化の再興の流れって実際のところ、文化や時代の善し悪し云々や自称文化人たちの小難しい文化批評によって始まるわけではなくて、国・文化問わずあらゆる人間が持っている普遍的な過去の時代への憧憬によって始まるものなのでは?

 vaporwave自体はその楽曲や動画制作の過程でイリーガルな要素があまりにも多いから、個人的には大きなムーブメントになるとは思ってなくて――もしムーブメントになるとすれば、vaporwaveみたいな奇天烈な形のものでなく、最近出たThundercatの『Drunk』みたいなあの時代のレア・グルーヴやファンクをもっと上手く現代的な形で消化したものなんじゃないかなあ、と思う。
 ただ、それはさておいて80年代文化の再評価の流れ自体は間違いなく来るし、既に来てる。これまでにもクリーミィマミやセーラームーンうる星やつらなんかはしばしば若い世代に人気のアニメコンテンツとして取り上げられてきたし、実際今そういうものに触れている若い世代は多い。音楽でも松任谷由実、杏里、山下達郎シュガー・ベイブなんかのLP時代のアルバムがCDで復刻されてるし、若いアーティストからのコメントなんかも載せられてるのを見るに、単にその時代を生きたおっさんだけに焦点をあてているわけじゃないのは明らかで、その復刻の流れがどのへんのアーティストまでに及ぶのかは分からないとしても、まあそれが10年代の一角を形成するくらいにはなるんじゃないか、と勝手に思ってる。


 これ以上書くとこれも独りよがりな文化批評じみてくるのでこの辺でやめておくことにする。
 別に自分はその都度自分にとっていいと思うものを好き勝手に拾い上げてくだけだから、それが流行るか流行らないかは実際のところそれほど気にしてない。自分の感覚からみて「好き」か「嫌い」かがあるだけで、文化や流行に良いも悪いもないしね(ハナホジ
 

  • 2017.07.26 もともと適当にまとめあげようと思っていたものがなんだかんだ長く、ごちゃごちゃしてしまったので、後から色々補記や参考にしたサイトなどを記載しておいた。まあそんなことしたところで昨日のアクセス数1なんだけどガハハ